旅の疲れを癒すために、運動後のクールダウンとして、さらには狂犬病の治療にまで湯が活用されていたとは、恐るべき入浴信仰ではないでしょうか。
現代のサウナ愛好者も顔負けの入浴信仰です。

さらには、ローマ医学の巨星ガレノスもまた、入浴の医療的価値を説いていました。
彼は入浴を温水浴、冷水浴、湧水浴の三つに分類し、それぞれの効果を細かく分析しています。
温水浴は血行を促進し、筋肉を和らげ、老廃物を排出します。
冷水浴は皮膚を引き締め、身体を鍛え、心身を活性化させるとのこと。
そして湧水浴は、含有成分によって体調を整える特別な湯治の役割を果たすといいます。
これはまさに、現代の温泉療法の原型ではないでしょうか。
このように、古代ローマにおいて入浴は単なる快楽のための行為ではなく、健康維持と治療のための手段でもありました。
アスクレピアデスがその理論を唱え、ケルススが実用書としてまとめ、ガレノスが体系化したのです。
そして、ローマ人たちはこの医学的知見を踏まえながら、今日の我々と同じように風呂に浸かり、心と体を癒していました。
考えてみれば、日本の銭湯文化にも通じるものがあるではないでしょうか。
風呂に浸かることで日々の疲れを洗い流し、健康を保つという発想は、時代を超えて共通しています。
かくして、古代ローマ人と我々は、テルマエと銭湯を通じて、密かに時空を超えた親交を結んでいるのです。
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参考文献
大阪大学学術情報庫OUKA
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/66525/
ライター
華盛頓: 華盛頓(はなもりとみ)です。大学では経済史や経済地理学、政治経済学などについて学んできました。本サイトでは歴史系を中心に執筆していきます。趣味は旅行全般で、神社仏閣から景勝地、博物館などを中心に観光するのが好きです。