古代ローマの人々が現代の私たちと同じように入浴を楽しむ文化を持っていたことは、漫画や映画で取り上げられたこともあって知っている人は多いでしょう。
しかし古代ローマの入浴事情に関しては、あまり知らない人も多いかもしれません。
果たして古代ローマの人々はどのように入浴を楽しみ、どのような目的で入浴をしたのでしょうか?
この記事では古代ローマの公衆浴場がどのような施設であったのかや古代ローマでも入浴が健康法と結び付けられていたことについて取り上げていきます。
なおこの研究は堤亮介(2014)『元首政期ローマにおける : 「都市の健全性」と公衆浴場』 パブリック・ヒストリー. 11巻p. 17-35に詳細が書かれています。
目次
- 総合レジャー施設だった古代ローマの入浴施設
- 古代ローマでも入浴が健康法と結び付けられていた
総合レジャー施設だった古代ローマの入浴施設

古代ローマの公衆浴場、すなわち「テルマエ」とは、単なる入浴施設などではありません。
テルマエは一大社交場であり、文化の坩堝(るつぼ)でした。
さて、そもそもテルマエとは何でしょうか。
それは現代日本のスーパー銭湯とは異なっているものの、どこか似たものです。
ローマ人にとって入浴は単なる身だしなみではなく、人生を豊かにする神聖な儀式であったのです。
風呂に浸かり、友と語らい、詩を詠み、時には政談を交わす。まことに雅な日常ではないでしょうか。
例えば、西暦212年にカラカラ帝によって建設されたカラカラ浴場は、驚くべき規模を誇ります。
全長225メートル、幅185メートル、高さ38.5メートルという壮麗な建築。
もはや宮殿といっても過言ではないでしょうか。
内部には冷水浴室(フリギダリウム)、温水浴室(テピダリウム)、熱水浴室(カルダリウム)が配置され、訪れる者はこれを巡り、心身ともに清めます。