新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の起源を調査するように指示を出したのは、当時のドイツの首相府だった。メルケル政権下で、BNDのブルーノ・カール長官は首相府に対し、この機密作戦の結果とBNDの評価を報告した。しかし、首相府はこの極めて重大な情報を非公開とする決定を下しているのだ。
メルケル氏は、この件についてコメントを拒否。当時の首相府長官ヘルゲ・ブラウン氏らも発言を控えている。当時の保健相で、メルケル氏と同じく「キリスト教民主同盟」(CDU)のイェンス・シュパーン氏は、情報機関の報告について「自分は何も知らなかった」と述べている。
BNDの説明を聞いたドロステン教授はドイツ通信(DPA)に、「(BNDが説明した内容について)‘beeindruckt‘(衝撃を受けた)」と答えている。ただし、教授は何に衝撃を受けたかについては、沈黙した。
中国武漢発の新型コロナウイルスの発生源問題では「自然発生説」と「WIV流出説」の2通りがあるが、ドロステン教授は前者の立場だった。ドロステン教授は南ドイツ新聞(SZ)とのインタビュー(2022年2月9日)で新型コロナウイルスの武漢ウイルス研究所(WIV)発生説について、「コロナウイルスSarsCov-2が武漢のウイルス研究所から発生した可能性を排除したくないが、それはありそうにはないと思っている」と語っている。そして「これまで自分は動物界からウイルスの自然発生説と武漢研究所発生説の2通りの説を排除してこなかったが、動物界からのウイルスの自然起源がより妥当であると考えてきた。Sars-CoV-2と同じ種に属するSars-1ウイルスを知っている。Sars-1はコウモリに由来する。ウイルスはジャコウネコとタヌキなど中間宿主を経過して変化し、人間にも感染するようになった可能性がある」と説明する。実験室起源説の仮説については「比較的質の高い科学的証拠はまだない」と答えていた。