そのため、燃焼系の香りに対しては「これは悪い匂いではない」というポジティブな印象が形成されやすいのです。
また、ガソリンやタバコ、香水などに含まれる“揮発性有機化合物”は、脳内の「報酬系」を刺激することもあり、人によっては少し陶酔感のある快感を覚えることもあります。
もちろん、それが健康に良いかは別の問題。 むしろ、こうした「快感」と「実害」がズレていることこそが、現代の臭覚の“バグ”なのかもしれません。
嗅覚の印象は時代に追いついていない
人間の五感の中で、嗅覚はもっとも古い感覚だと言われています。
脳の中でも“進化的に古い領域”が臭いを処理していることから、臭覚は「原始の脳と直結している感覚」とも呼ばれます。
だからこそ、生ゴミの臭いに顔をしかめ、ガソリンの匂いにうっとりしてしまうという現象も、理屈ではなく進化で刷り込まれた感覚の結果なのです。
もしあなたが次に生ゴミの臭いに思わず顔をしかめたら、「ああ、人類が進化がこの臭いを避けさせるんだな」と思い出してみてください。
そして、ガソリンの匂いを心地よく感じてしまったら……ちょっとだけ鼻を遠ざけておきましょう。 進化のアップデートは、まだそこまで追いついていないかもしれないのです。
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参考文献
Why Some People Love the Smell of Gasoline
https://www.discovermagazine.com/health/why-some-people-love-the-smell-of-gasoline
元論文
An initial evaluation of the functions of human olfaction.
https://doi.org/10.1093/chemse/bjp083
The evolution of disgust for pathogen detection and avoidance
https://doi.org/10.1038/s41598-021-91712-3