プーチン大統領は、ゼレンスキー大統領について、あまり言及しない。するとすれば、「キエフのネオナチ」のような侮蔑的表現で政府関係者を集合的に扱ったうえで、その首領がゼレンスキー大統領である、という位置づけをする。

実際に、プーチン大統領は、政治経験の浅いゼレンスキー大統領を同格扱いしたくないという心理状態にあるのだろう。これに対してゼレンスキー大統領は、明らかにそのような扱いに苛立っている。そこでことさら対決の図式を描いて見せて、プーチン大統領を挑発してみせようとしている。

第三に、このような決闘の図式を描いたうえで、ゼレンスキー大統領が「自分は若い」という理由で、欧州人は、プーチン大統領ではなく、自分自身に投資をするべきだ、といった話をして、欧州各国の支持を維持しようとしている。

ゼレンスキー大統領が言う「若さ」は、たとえばわれわれが日本の政治状況などを見て思う「若さ」の論点とは、違うだろう。日本のような老齢政治が常態化している社会であれば、若い政治家が、若い視点で、若者の利益を優先させて、政治を行ったほうがいいだろう、といったことが話題になりうる。

ゼレンスキー大統領が言う「若さ」の論点は、そのこととは違う。ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領は自分より先に死ぬ、自分は長く生き残る、だから自分がプーチン大統領に勝つ、ということを言っている。これはまたかなり特異な視点に立った発言である。冗談のつもりなのかもしれないが、面白くもない冗談である。

果たしてゼレンスキー大統領は、いったい何年戦争を続け、何年自分が大統領の職に居続けるつもりなのだろうか。皮肉のようだが、そのような問いも感じないわけではない。

最後の最後になったら、大統領の若さが、ウクライナの最大の武器だ、ということになるのだという。年齢が上のほうが、先に死ぬので不利である。若い大統領のほうが長く生き残る、というのは、消耗戦を前提にしても、よくわからないチキンレースに戦争の状況をたとえた表現である。