もちろんゼレンスキー大統領は、プーチン大統領は不安を持っている、と断定しているだけである。自分にはあてはまらない、自分には何も不安はない、といわんばかりの態度をとっている。だが、今のウクライナで大統領職を務めていて、何も心理的負担を感じない人間などが存在しうるだろうか。いずれにせよ、ゼレンスキー大統領は、「大統領の心理」を、非常に気にしている。

米国のトランプ大統領が、ゼレンスキー大統領を「選挙のない独裁者」と呼んだとき、ゼレンスキー大統領は、猛烈に感情的な反応をした。「自分は圧倒的多数の国民の支持を得ている」、と主張した。したがって公式には、あるいは主観的には、自分は国民の支持を得ているが、プーチン大統領は持っていない、ということになっている、あるいはそう信じている。

だが、見る人によっては、反対の印象を抱く場合もあるだろう。つまり、選挙で信任を得ているので、時々の世論調査の結果はあまり気にせず、代わりに「ゼレンスキー大統領は選挙をやっても本当に勝てるのか」とつぶやくプーチン大統領とトランプ大統領のほうが、むしろ余裕がある、と感じる人も、少なくないだろう。

ゼレンスキー大統領は、選挙を無期延期にしているだけに、日々、世論調査の結果を気にしなければならない。「自分はプーチンより人気がある」ということを、いささか素直すぎる表現で、自ら、主張し続けなければならない。独特の心理状態にあると思われる。

第二に、国家間の戦争を、二人の大統領の決闘として捉えている度合いが非常に高い。最高権力者の存在が、国家にとって重要であることは間違いないだろう。だがゼレンスキー大統領は、四六時中、プーチン大統領について語っているような印象がある。いつもプーチン大統領がいかに邪悪な人間であるかということを、語り続けている。そして自分の存在を、その邪悪の象徴であるプーチン大統領の対極に位置する人物として、描写する。