黒坂:なるほど。スポーツの例ですが、これは企業経営にもそのまま当てはまりますね。

経営者と従業員の関係は、監督と選手の関係に非常に似ています。経営者が求めるものと、従業員が求めるものは必ずしも一致しません。経営者は競争力を高めるために変革を求めますが、従業員は安定を求めることが多い。これが「成長」と「現状維持」の間の矛盾を生むのです。

しかし、長期的には従業員も成長を望んでいる。だからこそ、リーダーが適切な負荷をかけ、成長を促すことが重要です。それは短期的には苦しいかもしれませんが、最終的には組織全体の成長につながるのです。

後藤:その通りですね。また、負荷のかけ方についても重要なポイントがあると思います。

私の大学時代の話になりますが、早稲田大学ラグビー部が弱かった時代、練習はとても厳しかったんです。でも、ただ厳しいだけでは勝てなかった。そこに清宮監督が就任し、チームは一気に強くなったのですが、それは単なる厳しさではなく、適切な負荷をかけることで成長を促したからなんです。 つまり、リーダーが適切に負荷を調整しないと、単なる苦行になってしまう。負荷をかければいいというものではなく、どのようにエネルギーを集中させるかが大事なのです。

たとえば、バスケットボールの「24秒ルール」のように、適切な制限を設けることで、組織のパフォーマンスが向上することがあります。単に「もっと頑張れ」と言うのではなく、成長につながるルールを設定することが重要です。

黒坂:そうですね、リーダーの役割は、チームや個人の成長を促すために、適切な負荷をかけ、環境を整えることなのだと思います。

議題2:本当に優しいリーダーとは?部下にとって理想の上司の条件

黒坂:このテーマについて、私なりに三つのポイントがあると考えています。

まず、一つ目は「明確な基準と期待値を示すこと」です。

何を求められているのかが曖昧だと、部下はどう振る舞えばいいのかわかりません。そのため、「あなたにはこういう役割を期待している」「こういう成果を求めている」と具体的に伝えることが重要です。これにより、部下も自分の役割を正しく理解し、適切に行動できるようになります。