– 最大値(2√2)に迫る場面だけでなく、その途中にある「部分的に違反している領域」も含めて、統計分布がどんな“形”をしているのか。

– その“形”のどこに行き着いたときに、「装置の中身をほぼ一意に確定できる」=自己テストが成立するのか。

が一挙に見通せるようになったというわけです。言い換えれば、“これより先は行けない”という数値的な限界(CHSH値が2√2を超えられない)と、そこに至るまでのすべての相関の“地図”をまとめ上げたことが大きな成果だということです。

量子力学の非常識さの限界値を特定

量子力学の「非常識さの限界」がみえてきた―――最小シナリオで見えた新たな境界
量子力学の「非常識さの限界」がみえてきた―――最小シナリオで見えた新たな境界 / Credit:Canva

量子世界がどこまで“非日常的”な振る舞いを許すのか?

答えを得るため研究者たちはまず、“最小のベル実験”であるCHSHシナリオという舞台を用意しました。

これは、あたかも小さな劇場のようなもので、登場人物(アリスとボブ)を2人に絞り、測定方法を各2種類ずつに限定するという極限までシンプルなセットです。

「これで大丈夫なの?」と思うかもしれませんが、この条件だけでも量子力学特有のもつれ(奇妙なトリック)を十分発揮できる余地があるのです。

研究チームが次に行ったのは、まるで暗闇の部屋を照らすように、あらゆる測定角度やもつれの強さを網羅的にチェックするという作業でした。

角度や状態の組み合わせは一見無数に思えますが、数学的な対称性を巧みに利用することで重複を省き、すべての可能性を効率的に探索できる仕組みを整えたといいます。

そこで得られた膨大な統計データは、大きな立体図形のように一つの“かたまり”としてイメージできます。

さらに細かく見てみると、図形でいう「稜線」や「角」に当たる部分に、量子力学の非局所性が極限まで高まるポイントがあるのがわかりました。

そこでは「これ以上は決して超えられない」という“量子の壁”がそびえ立ち、まるで舞台の底から「ここが限界だよ」と宣言しているように見えるのです。