測定する瞬間に初めて「表か裏か」が決定され、それまでは確率でしか語れないため、誰も結果を先取りできません。
これこそが量子の“本質的なランダム性”の源です。
また、量子ビットは観測や操作によって簡単に状態が変化してしまうため、「装置の内部で密かに仕掛けを仕込んで予測可能にする」ことも容易ではありません。
もし不正を試みれば量子ビットの状態が壊れ、その痕跡が分かってしまうのです。
こうした“自然が決めるくじ引き”のような仕組みが、量子乱数生成の強力な基盤となっています。
特に量子コンピュータを使えば、古典コンピュータではまねしづらい“本質的なランダム性”を生み出せると期待されています。
とはいえ、「量子力学を使って生み出された乱数」であっても、外部から「それが本当に予測不能かどうか」を十分に証明できないと、不安が残ることも事実です。
そこで研究チームは、「大量のランダム回路を作り、超大型スーパーコンピュータを使った検証手法によって、量子由来の乱数であることを証明する」という壮大な実験に挑戦しました。
量子力学が乱数を変える時

量子コンピュータで生み出される乱数は、本当に“誰にも予測できない”ものなのでしょうか。
答えを得るため、研究者たちはまず、一組のカードを何度もシャッフルするかのように大量のランダム回路を用意しました。
これが「量子ビットに複雑な指示を与えるレシピ」であり、あらゆる手順を不規則に組み合わせることで、古典的には再現しがたい動きを狙います。
次に、そうして作られたランダム回路を「イオントラップ型」の量子コンピュータに渡して実行します。
これは、たとえるなら「見たこともない多面体のサイコロを振って、出目を測定する」ようなものです。
一回の測定で得られるビット列が本当に予測不能かどうかは、あとからチェックする必要があります。