こうして同じ“脱皮”という共通の特徴をもつエクディソゾアの祖先は、環境の変化や新たな生態的ニッチの出現に応じて、クマムシ、オンシフォラ、そして節足動物へと次々に枝分かれしていったのです。

ただし、分子時計の結果には、化石の校正点や使用する遺伝子領域の違いが影響するため、分岐年代の推定値には研究によって多少の幅があります。

それでも、カンブリア期を中心とした膨大な進化の奔流の中で、これら3つのグループが共通の祖先から分岐したという大きな枠組みは、現在広く受け入れられています。

こうした理解は、後に述べるクマムシとオンシフォラの近縁関係がどのように成立してきたかを知る上で、重要な手がかりになっているのです。

クマムシも脱皮する? 節足動物・オンシフォラと繋がる意外な証拠

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オンシフォラ(有爪動物:カギムシ)/Credit:wikipedia

クマムシ(緩歩動物)、節足動物、そしてオンシフォラ(有爪動物:カギムシ)は、いずれもエクディソゾアの内部に位置し、さらに「パナルトプロダ(Panarthropoda)」という大きなくくりに含まれる動物群とされています。

まず共通する特徴が「脱皮」で、これは成長時に体表を覆う外皮(クチクラ)を一度脱ぎ捨て、新しい外皮を形成するという性質です。

昆虫やクモのような節足動物は硬い外骨格を脱ぎ替えるイメージが強いかもしれませんが、クマムシも顕微鏡で観察すると、やはり成長段階で古いクチクラを脱ぎ捨てていることが確認されており、共通の祖先から受け継いだ“脱皮性”の痕跡がしっかりと残っているのです。

また、発生段階や遺伝子レベルでも多くの共通点が認められます。たとえば、体の前後を決めるHox遺伝子群や、体節形成・細胞分化を制御するシグナル伝達経路(Wnt、Notchなど)という「発生プログラムの基本ツールキット」を共有しているのです。

さらに、化石生物として有名なHallucigenia(ハルキゲニア)やAysheaia(アイシア)などの「ロボポディアン」と呼ばれる柔軟な体と短い脚をもつ生物を調べてみると、クマムシ・オンシフォラ・節足動物の共通祖先の姿をうかがわせる形質が見つかっています。