本コラムでは、クマムシの有名な耐久性とともに、その近縁系統がどのように分かれ、なぜ私たちがあまり知らなかったのかにスポットを当てながら、クマムシという不思議な生き物の奥深さを探っていきたいと思います。
目次
- クマムシは虫じゃない? 脱皮動物“エクディソゾア”の正体
- 6億年前の大分岐:クマムシはいつ“奇妙な仲間”と別れたのか?
- クマムシも脱皮する? 節足動物・オンシフォラと繋がる意外な証拠
- 脱皮仲間の中でも異端児?クマムシを“最強”たらしめる理由
- 昆虫よりも近い!?クマムシの親戚は“有爪動物”だった
- 奇妙な化石が語る“パナルトプロダ”の正体:クマムシとオンシフォラの起源
- 最強と最弱は紙一重?クマムシの隣人“オンシフォラ”の切ない現実
- 分岐した運命:クマムシの“超耐久”とオンシフォラの“脆弱”が生まれた理由
クマムシは虫じゃない? 脱皮動物“エクディソゾア”の正体
クマムシ(緩歩動物)は、「エクディソゾア(Ecdysozoa)」と呼ばれる脱皮動物群の一員です。エクディソゾアとは、英語で「脱皮」を意味する“ecdysis”に由来しており、動物界の中でも体表や外骨格を定期的に脱いで成長する動物たちをまとめた分類群です。
ここには、節足動物(昆虫、クモ、甲殻類など)や線形動物門(回虫など)、類線形動物門(ハリガネムシ類)、そしてクマムシやオンシフォラ(有爪動物)といった多様なグループが含まれ、カンブリア爆発期以降、地球上で大きく繁栄してきました。
クマムシは、顕著な外骨格こそ持たないものの、胚発生の過程や体節の配置、そして脱皮を行うという点でエクディソゾアに確かに位置づけられます。
一見するとクマムシの丸っこい姿は昆虫やクモと大きく異なるように見えますが、分子系統解析や発生学の研究から、これらの仲間とは共通の祖先を共有し、同じく“脱皮性”を受け継いだことが明らかになりました。
過去にはクマムシのゲノム解析をめぐり、外来遺伝子が大量に取り込まれているかもしれないという論争も起きましたが、再解析で当初考えられていたほど極端ではないことが示されました。