もう一つは車の買い替えの停滞が招く影響です。コロナの時、半導体が足りず、自動車ディーラーから売る車が全くなくなる事態が生じました。今回、ディーラーには車があるけれど車が売れないという事態が予想されますが、消費者行動は「この関税は何時か無くなるかもしれない」という期待で一種の「我慢モード」にこれから入るとみています。近年のクルマは性能が良いので1-2年、延命させることは全く問題ありません。

すると仮に将来、この関税が撤廃されたとき、潜在需要が一気に爆発し、こんどはディーラーに車がない状態なりかねないのです。つまりトランプ関税は人々のマインドに強く影響し、消費の振れ幅を過剰にさせるリスクはあるでしょう。当面は巷に言われるスタグフレーション(不景気なのに価格が上昇すること)を招くと思います。これはFRBにとって超難問となるはずで容易な金融政策の変更ができなくることも予見できます。

一方、高額車への影響は軽微だと思います。特定の車種を目指す人は金額の問題というよりその車をいかにゲットするか、ということですので今回の影響が最も出るのは大衆車だと思います。

もう一つ先読みをすれば中古車市場への影響は大きくなります。仮にこれが恒久的な措置だとすれば今後の輸入車の購入価格は25%上がるわけですから中古市場でも今後値上がりが予想されます。すると関税がかかっていなかった古い車への需要が高まるというシナリオも描けないことはないと思います。多分これは3-4年後の話になります。

私は事業者として何が起きるか考えるのが仕事ですが今回の関税が引き起こすであろう影響は思った以上に深刻になると考えています。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月28日の記事より転載させていただきました。