ざっくりした予想では日本勢では日本からの輸出が現地販売の52%を占めるマツダと44%のスバルが最大の受難者、ついで17%の日産になると思いますが、日産の場合はそもそもの経営危機の最中での話なので経営の屋台骨という点では日産への影響は大きいと思います。
では実際の関税はどう扱われるのか、といえばそれらの自動車メーカーが何か金銭負担をするわけではありません。輸入ディーラーが輸入時に査定された関税を払うだけです。今回の25%の追加関税は既存関税の2.5%に上乗せする部分ですから自動車関税そのものは27.5%になります。ディーラーは仮に今まで500万円で輸入していた車のコストに137.5万円の関税がかかり、637.5万円が輸入コストになります。当然ながらエンドユーザーへの販売価格はこの関税分を引き上げないと輸入ディーラーは赤字になります。
一般的には製造元である自動車メーカーへの出荷価格の引き下げ要請、及びディーラーのリストラによる販売コストの削減を行い、なるべく関税増分を圧縮するように努力するでしょう。特にメーカーからは販売奨励金を含めた様々なインセンティブが出ると思われ、消費者からすればどの車がいくらで売られているのかさっぱりわからない事態も発生するかもしれません。
いずれにせよ、アメリカ内にある輸入車販売ディーラー、特に日系、韓国系、ドイツ系は販売数の激減が予想されると思います。ではアメ車の一人勝ちか、といえば全然そのような様相もなく、GMもフォードもカナダ、メキシコなどとの協業の中でクルマを作り上げているので経営インパクトは相当あるとされます。とくにフォードへの影響は大きく、ジム ファーリーCEOは「前代未聞」で「壊滅的」と訴えています。影響が少ないとされるテスラは逆に政治的なコンフリクトを起こしており、これでテスラがバカ売れすることもまずないだろうとみています。
2024年、アメリカは約1600万台の車を販売しています。私はこの関税措置で車業界に勝者なしで消費者は様子見をするのではないかと思います。つまり買い替えが進まず、販売が大きく落ちるシナリオです。当然ながら車が売れなければディーラーのリストラはあり得るわけでトランプ関税が一部の人の職を奪う事態になる公算は高いとみています。