東西ドイツの統一から30年以上が経過したが、未だに旧東ドイツ地域は、旧西ドイツに比べて生産性や所得水準が低く、失業率も高い傾向にある。東西ドイツ統一時、人口は東ドイツが西ドイツの4分の1、面積は約4割、経済規模(GDP)は6分の1に過ぎなかった。

統一の為に行われた政策は主に「通貨統合」(東西ドイツ通貨の交換比率は実質1対4~5だったが、強引に1:1で交換)と「開発支援」(旧東独の生産力の底上げが目的。直接的な財政移転、ドイツ統一基金、連帯協定に基づく開発支援)が行われたが、依然として旧西ドイツとの格差は完全には解消されていない。

例えば、17年時点での一人当たり可処分所得は旧東ドイツのブランデンブルク州など5州がドイツ平均を1割から2割ほど下回っている。人口も旧東ドイツから旧西ドイツへの人口流出が続いており、旧東ドイツ地域では空き家や建物の老朽化が進行している一方で、旧西ドイツ地域では住宅不足が問題となっている。

旧東ドイツの住民は旧西ドイツと比べて失業率が高く、所得水準が低いことに対し強い不満を抱いている。そして旧東ドイツの住民は、自分たちが「二級市民」として扱われていると感じることが多く、社会的な疎外感を抱いている。

また、旧東ドイツには「約400万人のドイツ語が不自由なロシア移民」、「ロシアの理解者と言われる知識人・ビジネスマン」、「極右思想に影響を受ける若者」などが存在し、極右勢力の台頭や排外主義が横行する要因となっている。

ドイツ総選挙に大きな影響を与えたイーロン・マスク

米国トランプ政権の政府効率化省議長イーロン・マスクは23年9月29日、X(旧ツイッター)で「独政府が補助金を出している。欧州の自殺を止めるためにAfDが選挙に勝つよう願おう」と記した投稿を紹介し、「ドイツの人たちは知っているのか」とコメントした。

その後もマスクはAfDへの支持を更に強め、25年1月にはアリス・ワイデル共同党首とのライブチャットを開催した。また、1月20日、ドナルド・トランプ大統領就任式に出席したマスクはナチス式敬礼らしき仕草を3度行った。1月25日にはAfDの集会で演説した。マスクは集会で「ナチスの歴史にまつわる過去の罪悪感にとらわれるな」、「子どもたちに親の罪を背負う義務はないし、曽祖父母なら猶更だ」、「ドイツの偉大な未来のために戦おう」などと発言した。