現在の集金方法がもたらすデメリットとは

——部活動の集金に関するDXが遅れていることで、学校側はどのような課題を抱えているのか教えてください。

部活動におけるDX化が進まないことで、学校側には、

●部活動費用のブラックボックス化

●部活動管理が非効率になる

この2つの課題があると考えています。部活動からの収支報告は受けるものの、ほとんどが事後報告で中身を把握できていないという学校が多く存在します。これは先述の臨時的な徴収が多く発生し、事前の報告が難しいことに起因するものです。

 部活動に関するお金がブラックボックス化することで、生徒会から部活動に出ているお金と保護者から徴収したお金に重複が発生する、顧問による不正請求や水増し請求が行われる、などの事態も発生しかねません。実際、顧問が部活動にかかるお金を横領したり、後援会から勝手にお金を徴収したりという事例もあります。

 不祥事が明るみに出ると学校名が出てしまうにもかかわらず、重大なコンプライアンス違反につながる可能性がある事態を、学校が管理できないというのが1つ目の課題です。

 2つ目の部活動管理の非効率さは、おもに人的なコストに対する課題です。DX化がなされていない場合、集金の案内や受け渡し、集金管理、収支報告書の作成など、集金に関わる一連の流れがすべて手作業で行われます。集金ひとつに、顧問の工数が大きく割かれてしまっているのです。紙ベースでのやりとりが多いと、金銭的なコストも大きくなります。

 また、部活動の規模が大きくなると、大会などによって集金の対象になる部員が異なる場合もあります。手作業による非効率さを残した状態だと、本来集金の対象になる部員からの徴収が漏れたり、対象外の部員から誤って徴収したりという間違いも起こりかねません。

——保護者側が抱える課題はありますか?

 保護者側はおもに、

●集金受け渡しの煩雑さ

●突発的・臨時的な集金への対応

●収支の不透明さへの不安

この、3つの課題を抱えていると感じています。

 現在、家の中に常に現金が置いてある、という家庭は少ないのではないでしょうか。現代においては、「現金を用意すること」自体が手間で煩雑さをともなう行動です。

 また、紙の案内を確認して、紙の集金袋にお金を入れて子どもに持たせるという一連の流れの中で、子どもが案内や集金袋をなくしてしまうリスクも懸念されます。

 集金が突発的に発生することも、保護者を悩ませる課題のひとつです。常に家に現金を置くという習慣がないということだけではなく、突然の出費が家計の負担になってしまうことがあるのです。実際に、家庭の経済状況の問題で費用が工面できず、大会に参加できない生徒がいたという話も耳にします。

 最後の、収支に関する不安については、学校側が部活動に対して感じている不安と似ている部分があります。部活動の集金に関わる部分が不透明なため、自分たちが出したお金がどのように運営されているのか不安を抱える保護者は多いです。突発的な集金が多かったり金額が大きかったりするとなおさらですよね。顧問によって部活動の集金管理方法が異なることも、不安を煽る一因になります。

「現金主義」がブラックボックス化を招く…学校DX化の障壁は部活動!?
(画像=『Business Journal』より 引用)