さらに教育や知能が限られていると、天文学と占星術を混同する人が多いという報告もあり、そもそも「どれが科学的根拠をもつ学問で、どれが疑似科学なのか」を明確に区別しにくくなる可能性があります。
加えて、知能や学歴が低い人ほど複雑な要因が絡み合う現実をシンプルな説明で理解したいという傾向を示す研究もあります。
占星術は「星のせい」と片づけることで認知負荷を減らし、安心感を得やすくしている面があるのかもしれません。
これは、占星術に限らず、疑似科学やオカルト的主張全般を人々が信じる理由を探るうえでも興味深い示唆となるでしょう。
一方で、研究としての限界も存在します。
「占星術は科学的だと思うか?」という問いが、必ずしも「占星術そのものを本気で信仰しているか」を正確に測るわけではない点です。
なかには、天文学そのものと混同し、「どこか科学的かもしれない」という曖昧なニュアンスで回答している人もいるかもしれません。
それでも、何千人ものデータを用いて多角的に分析している点は本研究の大きな強みであり、「占星術を科学だと見る人にはどんな特徴があるのか」を大きく前進させたと言えます。
占星術をはじめとする疑似科学全般に対する理解を深めるためには、単に「科学的根拠がない」と否定するだけでなく、そもそも人々がどのような思考パターンでこれらを支持しているのか、その背景にある教育や知能、情報の受け取り方などをより広い視野で考察していく必要があるでしょう。
今後は、より精密な測定手法や異なる文化圏のデータを用いて検証を進めることで、私たちがなぜ星の動きに一喜一憂し、どこまで現実と結びつけてしまうのかが、さらに鮮明になっていくかもしれません。
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元論文
Intelligence and Individual Differences in Astrological Belief
https://doi.org/10.1027/1614-0001/a000434