もし水が超酸として強く働くなら、メタンなどの炭素化合物が意外な反応を起こして、電気や熱の伝わり方に影響を与えるかもしれません。
炭素がイオンという形で動くなら、惑星の磁場を生み出す「ダイナモ作用」を考えるときにも、新しい視点として加えられそうです。
また、産業の分野でも、高温高圧を利用した特殊な合成の現場で、実はこの“水の超酸力”が役立つかもしれません。
いままで触媒(化学反応を助けるもの)としてあまり意識されていなかった水の力を応用し、ナノダイヤモンドを効率的に作ったり、高性能な炭素材料を製造したりできるかもしれないのです。
ただ、現実の惑星内部や地球深部には、圧力や温度の条件が場所によって全然ちがったり、水とメタンだけでなくほかの元素(たとえば硫黄や窒素)が混ざっていたりすることも多いでしょう。
今回の結果はあくまで「純粋な水とメタンの系」をメインに研究したものなので、いろいろな混合物ではどんな反応が起きるのか、今後さらに詳しく調べる必要があります。
一方で、超高圧の世界を実際に測定する技術も進歩しており、ダイヤモンドアンビルセルと新しい分光装置を使えば、こうした極限条件で生まれる物質を直接とらえられる可能性が出てきました。
もしそうした実験のデータと今回のシミュレーション結果が合わされば、水と炭化水素のドラマチックな反応を、より確かな形で証明できるでしょう.
「超高圧・高温の水が強力な酸になり、炭化水素をダイヤモンドへと導く」という新しいイメージがはっきり示されたことで、惑星科学や地球科学の研究はもちろん、高圧化学や新素材合成の分野にも大きな刺激がもたらされたと言えます。
これまでは見過ごされていた反応経路や物性が、実は水の超酸パワーのおかげで活性化しているかもしれず、今後の研究がどう進むのかますます期待が高まります。
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元論文
Water is a superacid at extreme thermodynamic conditions
https://doi.org/10.48550/arXiv.2503.10849