しかし、それは犯罪捜査において、鑑識が集めた証拠や文書として残されたものだけに頼るのと同じである。その結果、新しい文書や発掘があるたびに定説が頻繁に変わってしまう。
外交の世界においても、もちろん相手の出方を見るうえで文書や物証は重要だが、噂話や経験豊富な人物の分析、さらには職業的な勘まで働かせて推理を行い、決めつけずに、有力な推論には手厚く、可能性のある情報にもそれなりの対応をしていく必要がある。
したがって、私はいわゆる歴史家というのは、文献学者か考古学者であり、歴史論の全体像を踏まえていないと感じている。たとえば、古代史においても外国の事例、戦国大名たちの攻防、旧家の人間関係なども推理の有力な材料になると考える。
私は、ディープステート的なものが、整然とはしていないが、国境を越えて隠然たる力を持っているとか、ユダヤ人の団結が強いとか、フリーメーソンの影響力も侮れないといった見方にも、それなりの真実があると思っている。
華人のネットワークはたいしたものであり、出身地ごとの結びつきも強い。ダイヤの取引はかつてユダヤ人が多かったが、現在ではインドのジャイナ教徒なども台頭している。旧ソ連におけるカフカス系の人々は、運転手のネットワークを通じて流通に大きな力を持っている。日本のパチンコ業界において半島系の人々の団結が強いのも確かである。東京の風呂屋については新潟出身者が多い。
ただし、たとえば外交において何かの決定をするには、多くの人が関わるので、一人がある動機を密かに持っていたとしても、それだけで組織が動くわけではなく、過大評価は禁物である。
たとえば、フリーメーソンのメンバーであっても、ほかの組織にも属している。これは、たとえば慶応大学の卒業生の団結が強いとしても、彼らもほかの立場を持っており、必ずしも慶応OBの候補を支持するとは限らないのと同じである。
中国が沖縄を独立させようとしているのかと言えば、少なくとも北京政府は、国民政府が沖縄返還に消極的だったことに対抗したり、米軍基地の機能縮小を狙っている側面はあるが、沖縄本土復帰に貢献したことは間違いない。