研究チームはこの関係が「一方の障害が他方を引き起こしている」のではなく、「同じ要因から複数の障害が生まれている」のではないかと考え、双子間の差異や時系列での能力変化、行動遺伝学モデルなど複数の手法を組み合わせ調査を行いました。
その結果、読みの能力がスペリング(書き取り)に影響を与えるという一方向の因果関係は確認されましたが、それ以外の関係性──たとえばADHDが読みの困難を引き起こす、といった因果関係は見られませんでした。
代わりに浮かび上がったのは、ADHDも読み書きの困難も計算の苦手さも、同じような遺伝的背景によって生じているという事実でした。
つまり、これらの障害が一緒に現れやすいのは、ある共通の「遺伝的な素因」がそれぞれに影響を与えているからなのです。
この発見は、私たちの支援のあり方にも大きな示唆を与えます。
たとえば、ADHDを治療すれば学力も向上する、といった安易な期待は現実的でないかもしれません。
逆に、学習支援を通じてADHDの症状が消えるという保証もありません。
それぞれの特性は互いに関連し合っているわけではなく、共通遺伝子から独立して発生しているため、それぞれに適した支援が必要なのです。
また、この研究は「親の育て方が悪いから子どもが集中できない」といった誤解にも強く反論するものとなっています。
学習や行動の困難さには、生まれつきの素因が関係していることが明らかになったのです。
発達特性の理解が進むことで、子どもたち一人ひとりに合ったサポートが提供される社会に近づくことができるかもしれません。
今回の研究は、その大きな一歩となるでしょう。
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参考文献
Shared genes explain why ADHD, dyslexia, and dyscalculia often occur together, study finds
https://www.psypost.org/shared-genes-explain-why-adhd-dyslexia-and-dyscalculia-often-occur-together-study-finds/