それとも、もっと根本的な共通原因が存在するのでしょうか?
この問いを解明するため、研究チームは「双子研究」というユニークな手法を取りました。
双子研究では、一卵性双生児(一卵性双生児は遺伝子をほぼ100%共有)と二卵性双生児(遺伝子共有率は約50%)を比較することで、ある特性がどれほど遺伝に影響されているのかを調べることができます。
今回の研究では、オランダ双子登録(Netherlands Twin Register)に基づき、1989〜2009年に生まれた双子1万9125組(約2万人)のデータを解析。
子どもたちが7歳と10歳のときに、教師からのADHD評価と全国統一の学力テスト(読み、書き取り、計算)結果を収集しました。
研究者たちは、これらの発達特性がどの程度重なって出現するかを調べるだけでなく、それぞれの能力の変化が互いにどう影響し合っているかも長期的に追跡しました。
たとえば、「ADHDがあると将来的に読みが苦手になるのか?」「逆に読みの困難がADHD症状を悪化させるのか?」といった因果関係にも迫ったのです。
見えてきたのは「遺伝の重なり」だった

調査の結果、ADHD、発達性読み書き障害、発達性算数障害は、それぞれ約9〜10%の子どもに見られました。
注目すべきは、それらの障害を2つ以上併せ持つ割合が全体の約23%にとどまり、大多数の子どもたちは一つの特性しか持っていなかったという点です。
つまり「三つ巴で現れるのが当たり前」というわけではありません。
これはADHDで集中できないから学習障害も起きるという単純な関係ではない可能性を示唆します。
しかし、たとえばADHDのある子どもは、読み書きの困難を抱える確率が約2.7倍、計算に苦手さを抱える確率が約2.1倍に上ることがわかりました。
さらに、読み書き障害を持つ子どもは算数障害を持つ確率が3.1倍高いという結果も得られました。