感覚的には一定のリズムを刻む心拍の方が健康そうに思えますが、実は逆で、心拍が不規則に変動する方が正常かつ健康な証なのです。

心拍のリズムというのは「交感神経」「副交感神経」という2種の自律神経の相互作用によって決まります。

交感神経は心拍数を増加させたり、血圧を上昇させる”アクセル”の働きを、副交感神経は心拍数を減少させたり、血圧を低下させる”ブレーキ”の働きをしています。

例えば、緊張すると交感神経が刺激されて心臓がドキドキし、リラックスすると副交感神経が刺激されて心拍も落ち着きます。

この2つの自律神経が正常に働いていると、心拍の間隔も絶えず揺らぐことになるのです。

反対に、体がストレスを感じていたり、加齢や病気により何らかの問題があると、心拍リズムは一定になることが知られています。

こうした理由からチームは「心拍変動(HRV)」を生理的なストレスマーカーとしました。

ヘンな言葉遣いは「生理的ストレス」を引き起こしていた!

さて今回の調査では、イギリス在住の健康な男女41人(18〜44歳、英語話者)を被験者とし、文法の誤りを含む音声サンプルを聴かせる実験を行いました。

音声サンプルには4人の異なる英語話者による160の会話文を用意し、その半分に文法のおかしな箇所が含まれています。

例えば、時制の間違い、単数形と複数形の混同、冠詞(the)の入れ忘れなどです。

実験中、被験者は専用の装置で「心拍変動(HRV)」を測定され、実験後はアンケート調査で音声サンプルに対する主観的な評価をしました。

ヘンな文法は私たちの自律神経系に何らかの影響を与えていた
ヘンな文法は私たちの自律神経系に何らかの影響を与えていた / Credit: canva

そして収集されたデータを分析した結果、文法のおかしな言葉を聞いたときに、被験者の「心拍変動(HRV)」が有意に減少、つまり心拍間隔のゆらぎが減ってリズムが一定に近づいていることが判明したのです。

これと同じ変化は文法の正しい言葉を聞いたときには確認されませんでした。