巣穴の使い回しには便利ではありますが、ダニが移るのは困りますね。

疥癬にかかるなどして弱ったウォンバットは捕食者につかまりやすくなります。弱ったウォンバットだけでなく、若い個体もターゲットになりやすい傾向があります。

では、元気いっぱいのウォンバットの場合はどうなるでしょう。

実はウォンバットは時速40kmで走ることができます。逃げ足が速いのです。でも、この速度は90秒ほどしかもちません。

走ると速いウォンバット(ただし超短時間)
走ると速いウォンバット(ただし超短時間) / Credit: Wikimedia Commons

この90秒が勝負です。ウォンバットは巣穴に逃げ込みます。

そして、そこでストップします。

ウサギのように巣穴の奥深く逃げるのではありません。なぜならウォンバットは有袋類の中で一番体が大きな、穴を掘る生物だからです。巣穴の入口が大きくて、逃げ込めば助かることも多いウサギの穴とは違います。

そこで、おしりで巣穴に蓋をしてしまうのです。

おしりで敵を防ぐウォンバット
おしりで敵を防ぐウォンバット / Credit: Wikimedia Commons

自分の体の一部で蓋をするという斜め上の発想。そんなことをして助かるのでしょうか?

実はウォンバットのおしりは大きな軟骨で覆われています。軟骨の上に脂肪、そして毛皮。とても硬いのです。おしりをノックしてみると、コンコン!と音がするほど。

そのおしりで巣穴に蓋をします。肉食獣が噛みついても歯が立たず、ウォンバットも痛みは感じません。そうやって肉食獣が諦めて去るのをじっと待ちます。

でも中には諦めの悪い相手もいるんですね。そんな時、ウォンバットは蓋をゆるめます。肉食獣は「おっ、ついに諦めたか」とばかり頭を突っ込みます。そうするとウォンバットは……

ゴン!

勢いよくおしりを振り上げます。硬いおしりで敵の頭を巣穴の天井にぶつけるのです。これを何度も繰り返すと、敵は頭蓋骨を砕かれてしまいます。

頭蓋骨を砕かれて死んだ肉食獣の死体がウォンバットの巣穴の転がっているのを見ることがあるそうですが……これが理由でした。