さらには、石油・ガス・電気を使用或いは併用した暖房器具には自動消火装置が装備されているが、薪ストーブにはそれは全く無いし燃焼器具に対する法規制も全く無いことも、特に留意すべき重大問題であろう。

ここで思い起こすべき点がある。昨今流行増加している「お洒落な欧米型の薪ストーブ」はそもそも、欧米諸国で未だに多い石や煉瓦等による建築物に、建物固定の暖炉に代わって設置されることが主に想定されている燃焼器具である。

石は燃えないが木材は燃える。日本で未だ多い木造家屋に、防火基準を大緩和しこれらの開放型燃焼器具を許容し積極的に「炭素中立・気候変動対策」だと言い推奨する政府(就中、国土交通省・環境省・農林水産省)の姿勢に大きな疑問を呈しておく。

日本では放火は民事刑事共に重責を問われるが、それとは違って「開放型燃焼暖房器具を使用した末の失火類焼」に対しては、原則として火元は何の責任も負わなくてよいという法制度の恐ろしく致命的な欠陥があり、近隣家屋にとっては(特に住宅地では)薪ストーブ付き木造家屋は現代の住宅事情を勘案すれば、あらゆる面で脅威となる存在であることは疑う余地が無い事実である。

昨今の住宅火災を見ていると、「発火元がこんなによく燃えて、延焼もしやすいのか?」と思うことが多いのだが、この規制緩和による悪弊が出ていないだろうか、関係諸官庁はしっかり客観的検証をして、庶民を安心させて欲しいものである。

なお、住宅地で容易に他者がアクセス可能な場所に薪という可燃物を大量(トン単位)に積載保管することのリスクも強く指摘しておく。薪切り騒音の件は既知と思われるので本稿では敢えて述べないが問題点としてだけ挙げておくので、騒音系被害に詳しい諸氏に議論を委ねておきたい。

この規制緩和は煙害問題を誘発する契機になってしまったのであるが、これは次稿に続けたい。

編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2025年3月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。