逮捕の必要性については、逃亡や証拠隠滅の恐れがあるかどうかという点で判断されます。判断において考慮される事情としては、被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重・態様その他さまざまな事情から判断することとされており(刑事訴訟法規則143条の3)、考慮要素も定められているのです。

ですから、「上級国民」という言葉はさておき、社会的な立場が高い人の場合、逃亡の恐れは低いだろうということも判断の考慮要素にはなるのです。

この部分だけを取り上げると、「地位が高ければ逮捕されないのはおかしい」という意見にもつながりやすいと思います。でも、そもそも逮捕という手続きは、犯罪の有無を確定させるための過程で必要な場合にされる一時的な身柄拘束にすぎず、被疑者に対する刑罰ではありません。地位が高いと刑罰が軽くなるという話であれば不公平ですが、犯罪や刑が確定しない逮捕手続きの段階であるという理解を前提にすると、また見方は変わってくるのではないでしょうか。

2021年9月2日、池袋の暴走事故を起こした人物(当時90)に禁錮5年の実刑判決が下されました。ちなみに前出のバス運転手は、禁錮3年6カ月の実刑判決を受けています。正義は金に負けていません。

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