黄色ブドウ球菌は、皮膚と接触するとV8プロテアーゼを放出し、これが皮膚上にある「PAR1」というタンパク質を活性化していました。
「PAR1」タンパク質は、熱、痛み、かゆみなどの信号を皮膚から脳に伝える役割があり、通常は休眠状態にありますが、V8プロテアーゼを含む特定の酵素と接触することで活性化するのです。
つまり、湿疹のかゆみとは、「黄色ブドウ球菌」が「V8プロテアーゼ」という酵素を放出し、「PAR1」タンパク質を刺激することで生じていたのです。
また追加実験により、昔からかゆみの原因だと推測されてきた免疫細胞や炎症性物質は、実は関係ないことも分かりました。
それらの免疫細胞をなくしたマウスを、黄色ブドウ球菌にさらしたところ、他のマウスと同様に、かゆみが生じて体を引っかくようになったからです。

そのため研究チームは、次のように結論付けています。
「研究を始めた当初、かゆみが炎症の結果なのかどうかわかりませんでした。
今回、私たちは、かゆみと炎症を分離できることを示しました。
細菌がかゆみを引き起こすのに、必ずしも炎症が必要なわけではないのです。
しかし、そのかゆみは皮膚の炎症を悪化させることがあります」
この世界で初めての発見は、これまで多くの人を悩ませてきた「湿疹のかゆみ」を遮断するのに役立つはずです。
既存の「抗凝固薬」でマウスのかゆみを遮断することに成功
黄色ブドウ球菌によって活性化されるたんぱく質「PAR1」は、血液凝固とも関連しています。
そのためチームは、抗凝固薬によるPAR1の遮断によって、湿疹のかゆみを軽減できるか確かめることにしました。
実験では、黄色ブドウ球菌に暴露されてかゆみを感じているマウスに、この抗凝固薬が投与されました。
その結果、マウスのかゆみは急速に減少し、かくことで生じる皮膚の損傷も軽減しました。