この謎を解明するため、カリフォルニア大学とシカゴ・フィールド自然史博物館の研究者たちは、博物館に保存されていたツァボの人食いライオンの頭骨と歯のDNA解析を行いました。
その結果、ライオンたちは人間だけでなく、シマウマやヌー、アフリカスイギュウなどの草食動物も捕食していたことが判明しました。
しかし、注目されたのはその割合です。
ライオンたちは通常の食性とは異なり、獲物の約25%が人間だったと推定されたのです。
これは通常のライオンと比較すると異常な割合であり、なぜ彼らが人間を狙うようになったのかを考える必要があります。
ライオンを人食いへ変える要因
研究チームの分析によると、ライオンが人を襲うようになった原因には、主に2つの要因があったと考えられています。
1つは19世紀後半、アフリカで猛威を振るった「牛疫(rinderpest)」というウイルス性の疫病です。
これにより野生動物と家畜の個体数が激減し、ライオンの主要な獲物が極端に減少したのです。
その影響で、ライオンたちは食料不足に直面し、代わりの獲物を探す必要に迫られました。
そんな中、鉄道工事のためにツァボに集まっていた労働者たちは、野営生活をしており、夜間も完全には身を守る手段がありませんでした。
無防備な人間は、空腹のライオンにとって比較的狩りやすい獲物だったのです。
もう1つの要因が、ツァボの人食いライオンの健康状態にあったと考えられます。
彼らの頭骨を分析したところ、1頭のライオンの歯が大きく損傷していたのです。
ライオンは通常、獲物の骨を噛み砕いて食べますが、このライオンは硬い骨を砕くことができず、より柔らかい骨を持つ獲物を必要としていたのです。
人間の骨は野生動物の骨に比べて柔らかく、彼らにとって食べやすい獲物だった可能性があるのです。
では、ライオンがどのようにして「人間が食べやすい」と認識したのでしょうか?