その結果、投与2時間後から血中の炎症性サイトカイン(※)が著しく上昇し、発熱が数時間にわたって持続することが確認されました。

特に体温変化を見ると、投与から5時間後に発熱のピークが来て、24時間後までには平熱に戻っています。

(※ 炎症性サイトカインは、炎症反応を促進する働きを持ち、細菌やウイルスが体に侵入した際に、それらを撃退して体を守る重要な働きをする)

ラットの疑似感染に伴う症状(A:体温変化、B:3種の炎症性サイトカインの血中濃度)
ラットの疑似感染に伴う症状(A:体温変化、B:3種の炎症性サイトカインの血中濃度) / Credit: 理研 – 熱が引いても疲れが取れない理由(2023)

次に、疑似感染が引き起こす倦怠感を定量評価するため、ラットの自発行動量の変化をモニタリングしました。

自発行動の多さは意欲の高さと関連しており、倦怠感は行動意欲を低下させることが知られています。

観察の結果、感染後に自発行動量は大幅に低下し、数日間かけてゆっくりと回復することが分かりました。

要するに、熱が引いた後でも倦怠感が持続していることが確認されています。

倦怠感は熱が引いた後でも続いていた
倦怠感は熱が引いた後でも続いていた / Credit: 理研 – 熱が引いても疲れが取れない理由(2023)

そして最後に、問題の「脳内炎症」が感染によって生じているかどうかを脳内イメージング技術で調べました。

その結果、poly I:Cの投与1日後に脳内の広範な領域において炎症が起きていることが判明したのです。

特に脳内炎症が多いほど、自発行動の低下量(つまり倦怠感)も増大していました。

左:脳内炎症が見られた領域、右:脳内炎症と自発行動の低下量との相関性
左:脳内炎症が見られた領域、右:脳内炎症と自発行動の低下量との相関性 / Credit: 理研 – 熱が引いても疲れが取れない理由(2023)

さらに、炎症が見られた各領域ごとの「脳内炎症」と「自発行動量の低下」を比べたところ、背側縫線核(はいそくほうせんかく)での脳内炎症が多いほど、倦怠感も増大していることが特定されました。