「熱は引いたのに、体のだるさがなかなか抜けない」
こうした実感は誰もが発熱のたびに経験しているでしょう。
しかし意外にも、熱が引いた後に倦怠感がつづく現象は、いまだにメカニズムが解明されておらず、有効な治療法もありません。
そんな中、2023年に理化学研究所のチームは、発熱にともなう倦怠感に脳内の炎症が大きく関わっていたことを発見しました。
研究によると、脳内炎症が多いほど、倦怠感も増していたという。
この結果は、発熱後の倦怠感の緩和や治療法の確立に貢献するものと期待されています。
研究の詳細は、2023年11月9日付で科学雑誌『Frontiers in Immunology』に掲載されました。
目次
- 熱は引いたのになぜ倦怠感は続くのか?
熱は引いたのになぜ倦怠感は続くのか?

インフルエンザや新型コロナを含め、様々なウイルス感染症が、発熱や痛みなどの全身症状を引き起こすだけでなく、長期にわたる倦怠感や意欲低下を招くことが知られています。
このうち、発熱や体の痛みについては詳しいメカニズムが十分に解明されてきました。
その一方で、熱が引いた後もつづく倦怠感や体の疲れに関しては、その実態が明らかになっていません。
しかしながら、発熱後の倦怠感や疲労感を訴える患者では、脳内の一部で炎症が生じていることが分かっています。
このことから、ウイルス感染後の倦怠感には脳内炎症が深く関わっている可能性が指摘されていました。
そこで研究チームは今回、脳内炎症を高感度で検出できるイメージング技術を使って、ウイルス感染したラットの脳内炎症を定量評価することに。
加えて、それをラットに見られる倦怠感のレベルと比較することで、ウイルス感染による「脳内炎症」と「倦怠感」の関連性を検証しました。
倦怠感の原因は「脳内炎症」にあった!
チームはまず、ウイルス感染時によく似た全身症状を引き起こすことで知られる「合成2本鎖RNA(poly I:C)」をラットに投与し、疑似感染で発生した身体症状について検討しています。