つまり、多数決で当選した権力者が少しずつ民主主義を侵害しようとするとき、それを阻止できるかどうかは「どれだけ多くの有権者がリベラルな価値を共有できているか」にかかっているともいえます

。逆にいえば、教育や公共的な議論を通じて、少数派保護や三権分立の大切さを認識する人が増えれば、選挙による民主主義の“自己崩壊”を防ぐ力が強まる可能性も十分あるわけです。

今後の課題としては、こうした「民主主義の中身」の違いがどのように形成され、変化していくのかをより深く調べる必要があります。

若い世代の教育環境やメディアの情報発信、さらに国や地域によって違う歴史的・文化的背景なども大きく影響すると考えられるからです。

また、今回の研究で浮き彫りになったように、党派対立だけでは説明できない要因が投票行動や政治の動向に影響するのだとすれば、単に「二極化を解消すれば民主主義が安定する」という単純な話でもないでしょう。

とはいえ、この研究が明らかにした「民主主義観のばらつき」が、いかに社会の将来を左右し得るかを理解することは、今の世界情勢において非常に重要です。

国民ひとりひとりのなかにある“民主主義を守るための基準”がばらばらならば、権威的なリーダーが少しずつ制度を変えていくことを止めにくくなってしまいます。

一方で、“守るべき一線”についての理解を共有できれば、仮に強引なリーダーが登場しても有権者は「さすがにこれは行きすぎだ」と声を上げ、投票行動でも明確にNOを示す可能性が高まります。

要するに、同じ言葉で「民主主義」と言っていても、その中身が違えば選挙結果や政治の行方にも大きな影響が生じてしまうということです。

この点を意識するだけでも、民主主義が“いつの間にか”崩れかけている場面で早めに気づけるかもしれません。

今回の研究は、民主主義をどう守るかを考えるうえで、「民主主義って何だろう?」とあらためて問い直す大切さを教えてくれるといえるでしょう。