田舎で平穏に暮らしていた一家が、カナダ史上最凶のポルタ―ガイスト現象に見舞われた事件がある。100年以上前に起きた不気味で恐ろしい一連の超常現象は、今なお地元住民たちの間で語り草になっているのだ――。
■ある日からはじまった謎の怪奇現象
19世紀末、カナダ・ケベック州ショーヴィルの田舎町、クラレンドンで農業を営むジョージ・ヘンリー・ダグの家族は、妻のスーザン、長女のメアリー(4歳)、長男のジョン(2歳)と家事手伝いの養女、ディナ・マクレーン(11歳)の5人で平穏な暮らしを送っていた。しかし、1889年のある時を境に、その平和な日々は無残にも打ち砕かれることになったのだ。
最初、異変は静かに始まった。一家では、業者への支払いのための現金を請求書と共に部屋にある収納家具の決まった引き出しに入れておくのが常であったが、請求書が台所の床で見つかったり、引き出しの中の現金がなくなることが続いたのである。さらに、家の中の物がなくなったり、別の場所に移動したり、石や木の枝が部屋に置かれていたり、ある時などは居間の床に豚の糞便が撒き散らされていたりと、相次ぐ不可解な現象に一家は悩まされることになる。
最初は家に出入りしているディーンという若い農夫のいたずらではないかと考えたジョージは、いったんディーンをしばらく出入り禁止にしたのだが、それでも奇妙な現象が止むことはなかった。
不可解な現象は徐々に悪意と危険性を増していった。夜中には屋敷のどこかで何かを打ち付ける音が常に響くようになり、家具が倒されたり窓ガラスや食器類が割られたりと、怪我をしかねない事態となり、さらい恐ろしいことに家屋の周囲で不審火によるボヤが頻発するようになったのだ。ボヤは多い時で1日に8回も発生し、一家は常に気の抜けない日々を強いられることになったのである。
