反対派の意見で大勢を占めるのは、サッカーの伝統や戦術的多様性を守りたいファンたちだ。「0-0でも最高の試合はある」と意見し、常に上位にいるビッグクラブとの対戦を引き合いに出し、守備の頑張りや戦術の妙を評価した上で、「真のサッカーファンなら0-0でも楽しめる」と、ゴール至上主義に疑問を投げ掛けている。

また別の、強豪クラブのファンは「強敵相手に0-0で耐えた弱小クラブにとって勝ち点1は正当な報酬」と指摘し、ピケ氏の提案に対し、サッカーが持つ競技性が崩れる懸念を挙げている。さらに「両チームが開始直後に1点ずつ入れる茶番になる危険性もある」という皮肉や、「強豪と弱小の差が広がるだけ」という現実的な批判もある。

FIFA 写真:Getty Images

「勝ち点3」ルール導入のきっかけ

評論家やメディアでは話題になっているピケ氏のこの提案だが、FIFA(国際サッカー連盟)やUEFA(欧州サッカー連盟)で議論される極めて可能性は低いだろう。ピケ氏自身が「組織に入っても変えられない」と否定的なコメントをしていることも報じられており、実現性には疑問符が付く。

そもそも、より攻撃的なプレースタイルを促し、引き分けを減らすために勝利の価値を高めるという同じ目的で、試合の勝利チームに与えられる勝ち点が「2」から「3」となったのは、1981/82シーズンのイングランドリーグの開幕戦(1981年8月29日)が始まりとされている。これはリーグ全体の方針転換によるものだった。

時を同じくして、1982年のFIFAワールドカップ(W杯)スペイン大会で、イタリア代表が3度目の優勝を飾った際に「勝ち点3論争」を後押しした背景がある。イタリアは1次リーグは3戦3分け(第1戦ポーランド代表と0-0、第2戦ペルー代表と1-1、第3戦カメルーン代表と1-1)。カメルーンも3分けで並んだが、イタリアが総得点で上回り2位で2次リーグに進出、結果的に1勝もできないまま2次リーグに駒を進めたことで批判の的となった。