このスコアレスドローでは勝ち点を与えない提案は、サッカーの試合をもっとエキサイティングで攻撃重視にするための面白いアイデアかも知れない。確かに、サッカーがゴールを奪い合うスポーツである以上、0-0で終わる試合は観客にとって物足りなく感じることもあり得るだろう。特に高いチケット代を払ってスタジアムに来ているファンからすれば、例え贔屓チームが敗れたとしても、ゴールシーンが見たかったというのは自然な心理と言えるのではないだろうか。

メリットとして考えられる点は、サッカー界全体に攻撃的なプレーを求める動機付けになる可能性がある。片や、守備に徹して“引き分け狙い”という戦略が減り、ゴールが生まれる確率が上がるだろう。顧客満足度という物差しで考えれば、妙案ともいえるだろう。

SNS上では活発な意見が飛び交い、ポジティブに捉えている賛成派は「これは名案。スコアレスドローで満足している人が理解できないし、チームが積極的にプレーするようになって面白い試合が増えるはず」と、エンタメ性を重視する立場から支持しているようだ。別のファンも「0-0の試合を見るのは苦痛」と共感を示している。ピケ氏自身が運営するキングス・リーグのようなエンタメ重視のスタイルが若い層に人気なこともあって、この改革案に肯定的な層は確実に存在する。


ジェラール・ピケ氏 写真:Getty Images

デメリット:伝統や戦術的多様性が減る

一方で、デメリットもある。サッカーの魅力の中には、例えスコアレスドローに終わったとしても、攻撃陣と相対する守備陣との緊張感のある駆け引きや戦術の美しさがある。守備が完璧に機能して相手をシャットアウトするのもそのチームの強さでもあり、単に0-0に終わったことで「勝ち点ゼロ」扱いになるのは、守備に特長があるチームやDFにとって不公平に感じるだろう。

また、このルールを採用することによって「どのみち負けてもスコアレスドローでも勝ち点ゼロならば…」と下位チームがリスクを冒し、無謀ともいえる攻撃に出て逆に大敗するケースが増える可能性もある。