銀河の渦は「トレーリングアーム(後ろ向きの腕)」と呼ばれる構造を持っていることが多く、その形状を利用すると回転方向が高い確度でわかるのです。

加えて、元の画像を左右反転させたうえで同じ解析を行い、もし人間の目や機械が「同じ方向ばかり選んでしまう」癖を持っていないかも検証しています。

こうして最終的に約260ほどの銀河が解析対象となりましたが、そのうち「私たちの天の川銀河と同じ方向に回転しているもの」より、「逆方向に回転しているもの」の方が、なんと50%ほど多いという衝撃的な結果が得られました。

統計的にも偶然とは考えにくい約3.39σ(p値にして約0.0007)もの有意差が出ており、明らかな偏りといえます。

特に画期的だったのは、深宇宙の高い赤方偏移領域(=宇宙の初期にあたる時代)の銀河まで大規模に比較できた点です。

宇宙が本当に「どこから見ても同じ構造をしているのか?」という問いに対して、これほど高精度かつ大量のデータで踏み込む試みは前例が少なく、「ブラックホールの内部にいるのではないか」という壮大な仮説も、実際の観測データをもとに検証し始めることが可能になったからです。

宇宙像を塗り替える新仮説

NASAのデータは私たちがブラックホールの中に住んでいる可能性を示唆している
NASAのデータは私たちがブラックホールの中に住んでいる可能性を示唆している / Credit:Canva

今回の観測結果が何よりも明確に示唆しているのは、宇宙の巨大なスケールにおいて、私たちが予想していた以上の「偏り」や「軸」が存在するかもしれない、という点です。

通常、ビッグバン理論に基づく標準的な宇宙モデルでは、宇宙はあらゆる方向に同じように広がっており(等方性)、銀河の分布や回転方向にも大きな偏りはないと考えられてきました。

しかし、今回のように一方の回転方向が極端に多いとするなら、この等方性が揺らぎ、単にランダムに散らばっているだけでは説明できない大規模な「構造」や「軸」が潜んでいる可能性が高まります。