70年以上も新規参入禁止はさすがにやり過ぎだという批判もあったのでしょう。輸出限定でならば日本酒造りの免許を与えるという規制緩和によってごく僅かな業者に限定免許が出されましたが、輸出限定というしばりで国内で満足に売れないのではブランドを確立することが非常に難しくなります。
現状で日本酒造りに参入しようとした場合は免許を持っている既存の業者を買収して事業継承という形で酒造免許を入手する。あるいは既存の酒蔵に製造委託という形を取るしかありません。
新規参入という競争圧力がない業界はどうしても進化が起こらなくなり停滞しがちになります。
そうしている間に日本酒はどんどん需要が落ち込んでおり、今や国内の酒類消費量ではシェアは4%台にまで下がっています。
日本酒は財務省所管の団体によって味の方向性もかなり偏った狭い範囲のみで評価するような状態でそこに三増酒がエントリー価格帯を占めるような状態でした。
2006年の法改正で三増酒はリキュール扱いとなって清酒を名乗れなくなり消えていきましたが、それまでの長い間に日本酒嫌いを大量に増やす原因となりました。
財務省と業界団体が古いやりかた、古い価値観でずっと業界に新風が吹き込まない体質を作っていた中でしたから、冒頭に書いたように良い酒は淡麗辛口と味まで決まっていました。
そんな中で山形の高木酒造の15代目杜氏となった高木顕統氏がフルーティで濃厚な旨味の十四代を世に出して人気となり、フルーティな日本酒のジャンルの先駆者となりました。
日本酒初心者や女性などにも受けがいいのはフルーティでやや甘口な日本酒でしょう。
文部科学省が天下り先との癒着を守る為に50年以上も獣医学部の新設を妨害していたように、日本酒についても財務省が業界団体との癒着を優先したのでしょう。実に70年以上も新規参入を阻止し続けてたのです。
若い醸造家によって新しい酒造りを行える環境を作ろうと国家戦略特区申請されているものが数件ありますが、財務省は地元の酒造組合が既得権を守るために絶対にイエスと言わない事を前提に「地元の理解が一番だ」という条件を付けることで特区による限定的な新規参入も認めない姿勢を取っています。