さて、日銀、FRB、それぞれが金融政策決定会合を開催したのですが、議長や総裁から聞こえてくる言葉は不確定とか不確実という言葉でした。政策を担う政権は司令塔、管制塔であり、経済をどのようにしたいのか、大枠の目標設定をするので目的地を決め、どの高度で飛行するのか決めます。中銀はパイロットでその方針を尊重しながら適度なインフレ率と適温の雇用状況が維持できるよう操縦するわけです。ところが今、操縦かんを握るパイロットが「視界不良、よく見えないぞ」と言っているわけで、特に今は「関税の嵐」を通過中というわけです。
トランプ関税というトリガーは確かにあります。特に4月2日の「相互関税」が最大のイベントとなります。それを受けてアメリカ経済をはじめ、世界経済にどのような影響が及ぶか金融、経済の頭脳たちでさえ読みにくいわけです。ただそれ以外に欧州へのエネルギー供給のかなめであるロシアの動き、このところ外向きの発言が少なくなった中国経済の動向は時代の変化を感じないわけにはいきません。
また新技術に対する市場の「吸収力」も踊り場を迎えています。EVの行方、海上風力発電の苦戦、小型原発(SMR)の普及の可能性、AIの功罪、更には低軌道衛星による技術革新があり、今後はITに革命的変化を及ぼす量子コンピューティングの開発が控えています。これら技術革新によって既存のビジネス体系が創造的破壊を繰り返すわけでどの分野にどのようなインパクトがあるのか、予見するのが困難なこともあるでしょう。
これらの動きに関して最も正直なのは投資家であり、その総体である株式市場の動きはある程度の方向性を示すと言えます。不思議にも3月4日にカナダ、メキシコ、中国にトランプ関税が発動され、その事実を市場が吸収した3月11-13日を底に市場の動きは比較的引き締まってきており、明らかにマネーが市場に戻ってきているように見えます。カナダの株式指標であるTSXは市場最高値まで3.6%まで戻しており、51番目の州とか、25%の関税というネガティブなイメージと市場の動きが正反対であることは特筆すべき点であります。