1963年11月22日、アメリカ第35代大統領ジョン・F・ケネディがダラスで銃弾に倒れた。この事件はアメリカ史上最大のミステリーの一つとされ、多くの陰謀論を生み出してきた。そして2025年3月18日、トランプ政権はJFK暗殺に関する約8万ページもの機密文書を公開した。60年以上にわたる情報の秘匿が解かれたことで、新たな証拠が見つかるのではないかと期待が高まったが、果たしてその結果はどうだったのか。事件の通説は覆されたのか、CIAやFBIの関与は証明されたのか。
暗殺の通説を覆す決定的証拠は見つからず
JFK暗殺をめぐっては、「リー・ハーヴェイ・オズワルド単独犯行説」と「複数犯・陰謀説」が長年対立してきた。今回の文書公開で、新たな視点が加わるのではないかと期待されたが、専門家の初期分析によれば「事件の本質を覆すような証拠は発見されていない」とされる。オズワルド以外に狙撃手がいた証拠や、彼が誰かと共謀していた確実な記録は含まれていなかった。
公開された資料には、オズワルドが暗殺の2か月前にメキシコシティを訪れ、ソ連およびキューバの大使館と接触していたことを裏付ける情報が含まれていた。この事実は以前から知られていたが、今回の資料によってCIAがこの動きを事前に把握し、盗聴まで行っていたことがより詳細に明らかになった。しかし、これが暗殺の共謀を示す証拠なのか、それとも単なる個人的な行動だったのかは依然として判断が難しい。FBIもオズワルドに関心を寄せていたものの、彼を危険人物としては十分認識していなかったことが、新たな文書で確認されている。

また、暗殺後のソ連側の反応を記録した文書では、KGBが「この暗殺はアメリカ国内の極右勢力によるクーデターではないか」と疑っていたことが示されている。さらに、KGBはオズワルドの射撃技術に疑念を抱いており、「彼はそれほど優れた射手ではない」と評価していたことも分かった。これは、オズワルド単独犯行説に対する一つの論点となるかもしれないが、実際に彼以外の共犯者がいたことを示す証拠は依然として見つかっていない。