
estherpoon/iStock
中国が経済発展したせいで日本が没落したかのように語る人がいるが、そんな因果関係はない。
日本と中国の逆転は1980年ごろの出来事に起因するが、それについては別の機会に論じるとして、日本はバブルという禁断の果実を味わい、その崩壊はまともな人なら予想できたことだった。ところが、その後の対応を誤ったために、20世紀末にはどうしようもない状況に陥っていた。
その破滅的状況の中で、中国市場の拡大により輸出が伸び、観光客が訪れ、安くて良質な製品を輸入できたおかげで、日本の国民生活は一定程度守られた。
中国の産業に日本の産業が負け、市場を失ったと言われるが、仮に中国が台頭しなかったとしても、韓国や東南アジアに負けていただろうから、結果は大きく変わらなかっただろう。むしろ、中国が経済発展しなかったら日本経済がより活気づき、国民生活が向上していたというシナリオを説明できるなら、ぜひ聞いてみたいものだ。
中国の発展が日本の軍事的な懸念となっているのは、日本経済が低迷し、それに対抗できるだけの軍備を充実させる余力がないからだ。加えて、軍事産業も自らの手を縛って輸出できない状況にある。仮に輸出が自由になったとしても、産業競争力が落ちている現在、本当に市場が広がるかは不透明だ。
日本企業がここ数十年、中国と関わったことで損をしたとは言えない。もちろん、失敗した企業も多いが、他の国と比較して特に酷い状況にあったとは言えない。
確かに、上げた利益を持ち帰りにくいといった問題はあった。しかし、例えば製造機械や部品を利益が出る価格で輸出する、日本国内で販売する製品を輸入し、国内産とあまり変わらない価格で売るなど、さまざまな形で利潤を得ることは可能だった。
また、中国政府の規制は煩雑だったが、それによって完全な自由競争にならず、価格競争だけに陥らなかったため、かえって利益を出しやすい側面もあった。