農業の発展を促した要因とは?

 考古学者や人類学者の間では、「なぜ人類が農業を始めたのか」について、いくつかの仮説が立てられている。

  1. 環境変化と食料不足
     地球温暖化により、これまでの狩猟採集では安定して食料を得ることが難しくなった可能性がある。特に大型動物の絶滅が進んだことで、新たな食料確保の手段として農業が発展したという説だ。
  2. 社会的・政治的要因
     一部の研究では、農業の発展と同時に「財産」という概念が生まれた可能性が指摘されている。狩猟採集社会では資源を共有することが一般的だったが、農耕を始めることで土地や作物を所有するという概念が芽生え、社会構造に変化が起きたのかもしれない。
  3. 植物による“だまし”
     スミソニアン研究所の人類学者、メリンダ・ゼダー博士は、あるユニークな仮説を提唱している。それは「人類は植物に騙された可能性がある」というものだ。つまり、人類が農業を始めたのではなく、一部の植物が生存戦略として人類に利用されるよう仕向けたのではないか、という視点だ。この説が正しければ、農業は人類の意図ではなく、進化の必然だったのかもしれない。