人類史上最大の技術革新の一つ、それは「農業の発明」だ。驚くべきことに、農業は世界の異なる地域で、互いに接触のなかった複数の文明によってほぼ同時期に発展した。これは「新石器革命(Neolithic Revolution)」と呼ばれ、考古学者や人類学者にとって長年の謎となっている。
この不可解な現象に改めて注目したのが、科学雑誌『New Scientist』のライター、マイケル・マーシャルだ。彼は最新の研究をもとに、なぜ世界各地の古代人が一斉に狩猟採集生活を捨て、農業へと移行したのかを探った。
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地球の変化と人類の進化がもたらした転換点
この歴史の大きな転換は、約1万1700年前、氷期が終わりを迎えた後に起こった。地球の気候が温暖化し、動植物の生態系が大きく変化したことで、人類は新たな生存戦略を模索する必要に迫られた。
2023年に発表された科学誌『PNAS』の論文によると、少なくとも24カ所の異なる地域で、人類はほぼ同時期に作物を栽培し始めた。これらの地域には、アフリカ、ユーラシア、北米、南米が含まれる。つまり、世界の異なる大陸に住んでいた人々が、互いに影響を受けることなく、独立して農業を始めたというのだ。
これは単なる偶然なのか、それとも何らかの共通した要因が働いたのか?研究者たちは長年この問いに答えようとしているが、未だに確かな答えは出ていない。