そこで起きたのがロシアのクリミア侵攻であり、ウクライナ東部の一部地域での親露政権の誕生である。これを受けて仏独と露宇のミンスク合意だが、ウクライナが誠意を持って守ったわけでなく、それがウクライナ侵攻の引き金になった。

フランスは、歴史的にロシアとは友好関係を結んで英米と一線を画してきた。ただ、マクロンは財務監察官を経て、ロスチャイルド銀行入りしたことから、フランスのなかでは珍しく英米のユダヤ系資本などと関係が深い。いわゆるディープステート寄りということになる(ディープステートというものがあるわけでないが)。また、アフリカでフランスはロシアのワグネルに取って代わられてきた経緯も、どっちが先かはともかくある。

マクロンが当選したときの共和党はフィヨン、再選されたときはペクレスが対立候補だったがいずれもやや親ロシアだった。また、極右のマリーヌ・ルペンもロシアとの関係は深い。なぜ彼らが潰されたかというのもある意味において気になるところだ。

いま英仏は、トランプ大統領とプーチン大統領の話し合いが進む中で、平和維持軍として軍を派遣していいとかいっているがロシアが呑むはずない。マクロンとしてはこれまでの失敗の照れ隠しで威勢のいいことを言わざるを得ないのだが、なんとか和平を目指すなら、フランス外交の伝統を活用し、もうすこしやれることはありそうだ。

私はロシア贔屓ではないが、平和を希求するためには現実と向き合うべきだという観点からトランプとプーチン主導でいいと思う。対中雪解けを主導したキッシンジャー外交が典型だが、平和を守るためには国際法とか正義だけでなく力の均衡が安定しないと無理だ。欧米はロシアを追い詰めすぎた。国際法に反したことはしてないといっても現実的妥当性がなかった。ウクライナまでNATOやEUに入れるのは、日本の安全のために日華事変を起こしたようなもの。東欧が満蒙、ウクライナは華北みたいなものだ。