確かに米国と比べれば日本の給与は安いのは事実で、円安と考慮すればかなりの差になる。
だが、「アメリカの年収を稼いで日本に住む」ということは一部の高度専門職のリモートワーカーを除けば現実的ではないことを考えると、必ずしも「生活レベル=年収格差」とは言えない事実が浮かび上がってくる。
日本の平均年収は約39,113ドルで、OECD加盟35か国中19位だ。一方、アメリカの平均年収は約69,392ドルで、日本よりも高い水準にある。メディアやSNSではこの数字を単純比較して危機を煽る。しかし、これらの数値は名目上のものであり、各国の物価水準を考慮していない。
購買力平価(PPP)を考慮すれば、各国の物価水準を反映した実質的な所得比較が可能となる。生活費についていえば、アメリカの主要都市は家賃や医療費などが高く、日本と比較して生活コストが高い傾向にある。具体的にはニューヨークの平均家賃は約3,500ドル(1ベッドルーム)に対して、東京23区では約1,200ドルで数倍の差がある。
このように、購買力平価を考慮すると、日本とアメリカの生活水準の差は名目上の年収差ほど大きくはなく、生活費や物価水準を踏まえた総合的な評価が重要だ。
特に住居費や医療費は顕著で日本では「家をケチると古くて音がうるさい」という感じだが、アメリカで家をケチると生命の危険が脅かされてしまうし、お金がなく大病を患うともはや治療が難しいというケースも少なくない。
加えて、アメリカの中上流家庭は日本より豊かなのは間違いないが、アメリカは社会格差が大きく、貧困層は日本よりもはるかに過酷な生活をしている人が大勢いる事実も考慮する必要があるだろう。
そう考えると「アメリカ人の全員が日本より遥かに裕福な生活を送っていて、日本は極度の貧困に落ちっている」とまでは言い切れないと考える。
日本は精神的貧困率が高い
もちろん、所得を増やし豊かな国家づくりを目指す努力は依然として必要なものの、個人レベルで取り組める問題として、「日本は精神的貧困率が高い」というものである。