アラスカ南西部、カトマイ国立公園に存在するサボノスキー・クレーター。直径約500メートル、深さ約110メートルのほぼ完璧な円形をしたこの穴は、科学者たちを長年困惑させてきた。

 このクレーターは、まるで隕石の衝突跡のようにも見える。しかし、地質学的な証拠がほとんど見つかっていないため、その正体はいまだに解明されていない。果たして、この謎めいた地形は宇宙からの衝撃によるものなのか、地下の活動が生み出したものなのか、それとも未知の何かが作り出したものなのだろうか。

隕石衝突説:決定的証拠はなし?

 航空写真で見ると、サボノスキー・クレーターは典型的な隕石衝突跡の特徴を備えている。隕石が地球に衝突すると、通常、円形のくぼみが形成されるため、このクレーターも同じように見えるのだ。

 しかし、1960年代と1970年代に行われた詳細な調査では、隕石の破片や衝突による岩の変質がまったく見つかっていない。さらに、隕石が地表に衝突した場合、本来ならクレーターの周囲に飛び散るはずの岩片も見当たらない。このことから、隕石衝突説は完全に否定はできないものの、決定的な証拠に欠けているのが現状である。