地下鉄の最寄り駅から徒歩約10分というアクセスの良さを誇る札幌ドーム(現大和ハウス プレミストドーム)に見切りを付け、計画段階では懐疑的な見方もされていたファイターズの札幌市郊外となる北広島市への本拠地移転を成功に導いた前沢氏。

アクセス面での問題は残るものの、エスコンフィールドの「ボールパーク化(単なる野球場としてではなく、さまざまなアトラクション、食事や座席なども充実)」を実現させ、人口約5万7,000人の北広島市の2022年の地価上昇率は全国トップを記録した。

ファイターズもその盛り上がりに呼応するかのように、昨2024年のペナントレース(プロ野球の公式戦)では新庄剛志監督の下、2年連続最下位から脱し、パ・リーグ2位でクライマックスシリーズに進出した。

また、ファイターズ入りする前の前沢氏は、横浜DeNAベイスターズで取締役事業本部長として、閑古鳥が鳴いていた横浜スタジアムの活性化に携わっていた。その辣腕を発揮した結果、今ではベイスターズは週末のゲームとなれば前売りチケットが完売するほどの人気球団だ。


浦和レッズ サポーター 写真:Getty Images

前沢氏がJリーグに感じた「疎外感」とは

まず、前沢氏が語るところの「疎外感」について考えてみたい。前沢氏が「疎外感」という言葉を使った背景には、彼がエスコンフィールドで目指した誰もが楽しめる空間と、Jリーグのスタジアムの雰囲気にギャップがあったことだと考えられる。

エスコンフィールドは、野球観戦だけでなく、飲食店、キッズランド、商業施設などを備えたボールパークとして設計され、試合がない日でも訪れる価値のある場を提供している。この取り組みは、単なる野球場という概念を超えて、地域社会や多様な客層を引き込むテーマパーク的な発想に基付いている。

一方、Jリーグのスタジアムは、熱心なサポーター文化が強く根付いているものの、いわゆる“一見さん”にとっては入りづらい雰囲気が存在すると感じたのだろうと思われる。