それは例えば、霊長類やその他の動物が発する特定の鳴き声とは違い、さまざまな「語彙」と「文法」を組み合わせて、無限の表現を生み出している点などです。
「人間の言語は質的に他の動物の発話と異なり、ありとあらゆる単語の組み合わせによって、非常に複雑なシステムを作り上げている」と研究者は指摘します。
こうした人間に特有の言語能力の基盤は、最初期の現生人類たちが世界各地に広がる以前に共有していたものと研究者は予想します。
そして人類が世界中に拡散する中で、その言語能力の基盤を種として、あらゆる種類の言語を独自に進化させていったと考えられるのです。
ここから研究者らは「現生人類が最初に世界各地に拡散し、遺伝的に分岐し始めた時期を特定できれば、少なくともその時期までには人間に特有の言語能力が誕生していたことがわかる」と説明します。
そこで研究チームは今回、大規模な遺伝子データから、現生人類が最初に分岐し始めた時期を調査しました。
人間の言語は13万5000年前には誕生していた?
チームは過去18年間に発表された15の遺伝学的研究を統合し、現生人類の地理的分岐を詳細に解析しました。
この分析には、以下の3つの異なる遺伝的データが使用されています。
1:父系を通じて継承されるY染色体の解析研究(3件)
2:母系を通じて継承されるミトコンドリアDNAの解析研究(3件)
3:全ゲノムの解析研究(9件)
そしてこれらのデータを統合した結果、最初の大規模な人類の地理的分岐は約13万5000年前に発生していたことがわかったのです。
この時期を境に、現生人類の各集団が色々な地域に拡散し始めたと考えられますが、それと同時に、少なくともその時点ですでに人間に特有の言語能力の基盤が生まれていたのだと予想できます。

さらにチームは、言語がホモ・サピエンスの社会的行動にどのような影響を与えたのかにも注目。