最近の研究では、この触覚ゲートによって発生させる抑制信号そのものに、特異な感覚を引き起こすことが示されています。

目の前で人に足裏や膝をなぞられる場合、予測できていてもやはりゾワゾワした感覚があります。

こうした感覚は予測される触覚への抑制信号と実際に触れられるタイミングがズレることで生じると考えらます。

VR世界にある「仮想の棒」との接触では、本物の触覚の信号が発信されませんが、触覚ゲートのほうは抑制信号を発信することになります。

そのため打ち消すべき触覚信号がなく抑制信号のみが発せられることになります。

これが「ゾワゾワした感覚」を発生させると推測できるのです。

研究者たちは今後、ファントム・タッチ錯覚の根底にある神経メカニズムについて、さらなる調査を続行していく予定です。

ファントム・タッチ錯覚を上手く制御できるようになれば、VR世界でのエンターテイメントだけでなく、医学や科学にも役立つようになるはずです。

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参考文献

When we feel things that are not there
https://news.rub.de/english/press-releases/2023-11-14-neuroscience-when-we-feel-things-are-not-there

元論文

Phantom touch illusion, an unexpected phenomenological effect of tactile gating in the absence of tactile stimulation
https://www.nature.com/articles/s41598-023-42683-0

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。