VR世界での触れ合いは、現実の感覚を引き起こすようです。
ドイツのルール大学ボーフム(RUB)で行われた2023年の研究によって、VR世界での触れ合いによって、ある種の錯覚が発生し、現実の私たちにゾワゾワとした触覚が発生することが確かめられました。
研究ではこの触覚の幻は「ファントム・タッチ錯覚(Phantom touch illusion)」と定義されており、VR世界に特有の現象であることが示されています。
仮想現実での接触を、私たちの体はいったいどんな仕組みで、現実の感覚へと変換しているのでしょうか?
この研究は2023年9月付けで科学雑誌『Scientific Reports』に公開されています。
目次
- VR世界の体験と現実の肉体の奇妙なリンク
- VR世界での接触は幻の触覚「ファントム・タッチ錯覚」を生む
- 「ファントム・タッチ錯覚」が発生する仕組み
VR世界の体験と現実の肉体の奇妙なリンク

SFの世界では「VR世界でのリアルすぎる体験によって、現実の肉体に影響が及ぶ」という設定がしばしばみられます。
例えば、「マトリックス」のような映画では、VR世界での死が現実の死に直結するという考え方が示され、「体は心なしでは生きられない」という理由で説明されます。
このような設定はVR世界での行動にリアリティを与える要因となっています。
しかし現実の科学では、現実世界でVR体験が肉体に影響を与えるかどうかについては議論があります。
精神的ショックや3D酔いなどVR体験が現実の身体に与える影響は確かにありますが、物理的接触に起因する感覚、特に「触覚」に関しては、VR世界と現実世界を繋げることは難しいと考えられています。
一方で、VR技術の普及に伴い、VR世界での接触体験が現実の肉体に奇妙な感覚を引き起こすという報告が増えてきました。これはVR感覚(ファントムセンス)などの言葉で表現されています。