この「英雄の旅」とは具体的にはどのようなものなのでしょうか?

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簡単に言うと、これは英雄が冒険に出て、試練を乗り越え、変化して帰ってくるという、物語の基本的な流れです。

このパターンは、世界中の多くの物語で見られ、それぞれの文化や時代によって異なる形で表現されてきましたが、根本的な構造は驚くほど似ています。

また2007年になるとヴォグラーによって、現在の物語にも広く適応できるように修正が行われたものが発表されました。

キャンベルの理論は、古代の『オデュッセイア』や『ギルガメシュ叙事詩』から、近年の『ハリー・ポッター』、『スター・ウォーズ』、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズに至るまで、幅広い物語に共通する基本的な構造を解き明かしています。

特にスターウォーズの監督として知られるジョージルーカスは、キャンベルの著書を読んで、スターウォーズの初稿がキャンベルの指摘したパターンと不気味なほど一致していることに驚いたと述べています。

しかし、なぜ数千年に渡り、人々は手垢にまみれた同じテンプレートを使い続けたのでしょうか?

理由は3つあると考えられます。

数千年もテンプレが使いまわされている理由

テンプレートは視聴者の共感を呼ぶ「最善手」

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Credit:Canva . ナゾロジー編集部

1つ目の理由は、キャンベルやヴォグラーが発見したテンプレートが、人類の心を揺さぶる「最善手」であった可能性です。

たとえば、出だしは「日常の世界」から始まることで、視聴者を主人公自身に投影しやすくなり、以降の感情的な共感を得る土台となります。

「日常の世界」以外の世界から語り始める場合、その世界について視聴者はイメージしにくくなり、主人公の境遇や暮らしぶりについての理解度、さらに心理的葛藤への共感が減少してしまいます。

もちろん「日常の世界」から描き始めることは必須ではありませんが「最善手」と言って良いでしょう。