なかには長さ30センチメートルを超える大型の骨を打撃用に再整形したとみられるケースもあり、単に割るだけでなく、用途に合わせて仕上げ加工を施していたことが示唆されます。

現在知られている最古の石器は約330万年前(ケニア・ロメクウィ3遺跡など)までさかのぼり、今回の「骨器」の事例(150万年前)のほうが年代としては明らかに新しいものです。

しかし今回の研究は「骨の道具が石器より早く登場した」という意味ではなく、石器しかないと思われていた時代の多くが骨器と共に歩んでいたということを発見したという点で画期的です。

石器と同じような工程で骨を道具化していた事例が、一つの遺跡からまとまって見つかったことは、私たちの道具史観を大きく更新するきっかけになるでしょう。

石器時代の多くは「骨器時代」でもあった

【衝撃】150万年前に骨の道具文化が芽吹いていた
【衝撃】150万年前に骨の道具文化が芽吹いていた / Credit:Canva

今回の発見により、骨という素材が石材と同程度、あるいは状況次第でそれ以上に役立つ場合があった可能性が示されました。

とりわけ大型動物の骨は厚みと強度があり、解体作業やものを砕く用途には十分な性能を発揮すると考えられます。

また石材の乏しい地域では、骨を代用資源として利用する戦略が有効だったとも考えられます。

「太い骨の塊」は重量があるうえ、衝撃を加えてもある程度割れにくく、打ち砕く・叩くといったタフな作業に向いていたと推測されます。

「石は硬いから打撃や掘削、骨は軟らかいから切断や細かい加工」というイメージを抱いてしまいがちですが、実際は“硬い”と“強い”は必ずしも同じ意味ではありません。

石は非常に硬いために鋭い刃を作りやすく、細かい加工や切削に向いていますが、同時に“もろさ”を持ち合わせています。大きな衝撃を繰り返し加えると欠けたり割れたりしやすいのです。

一方、骨は石に比べると柔らかい素材ですが、“粘り強さ”や“弾力”といった性質があり、大きく振り下ろすような打撃や衝撃にも比較的耐えやすくなっています。