しかし、子供は本当に正直だ。空気を読まずにストレートに欲求をぶつけてくる。これはまだ精神的に未熟だからなのだが、それ故に人間心理の本質を学ぶいい機会になると感じている。

たとえば子供は「見てみて!」とよく創作物の評価を求めてくる。赤ちゃんも親の気を引くためによく泣く。これらの原動力の多くは承認欲求であり、人間である以上、承認欲求は赤ちゃんでも持っている強い欲求なのだと理解できる。

大人になると誰しも、承認欲求をそのまま求めたりはしない。みっともないとわかっているからだ。だからそう見せないよう、テクニカルになる。こじらせた大人になると、ブランドや肩書きで欲求を満たそうとすることもある。

そして人がコミュニケーションを試みる時は悩み解決、もしくは承認欲求の解消のどちらかがほとんどであることを理解することで、「ああ、これは話を聞いて共感してほしいのだな。では自分が話さず相手に話させよう」といった相手のニーズを意識した振る舞いができるようになったと感じる。

結局、人の欲求部分は一生変わらない。育児を通じて、人の根本的な欲求がよく分かるようになるので、子供を喜ばせるのと同じアプローチで大人を喜ばせるのが上手になる。これにより、対人関係スキルが向上するのだ。

3. 人生のマネジメント能力

独身だった頃と、子供を持った後とで異なる最大の違いは「自分のため」から「家族のため」に変わったことだ。これにより、人生全体のマネジメントを家族中心の戦略に変えるようになった。

自分一人が生きていくなら、都心の便利なロケーションにあるマンションへ住むことを選ぶだろう。しかし、今はまったく異なる価値観を持っている。

子供の成長を意識すると、教育環境や周辺治安、買い物、公園など自分一人では選択基準に決して登らない要素をしっかりと考慮する。今後、引っ越しをする先もこのような観点から選択した。

また、世間的にも「資産運用は資産の最大化をするためにする投資戦略」といったものが受けている。自分も昔は似たような考え方をしていて、「40代はまだ時間があるので、資産運用はできるだけリスクテイクを」という感覚を持っていた。