むろん2014年のマイダン革命を経て、ウクライナは18年にCISからの離脱を表明している(ポロシェンコ政権下)。ところが面倒なのは、クリミアが有名だけど、同国には旧ソ連の下で「増やしてもらった」領土があることだ。
なのでプーチンに言わせると、ウクライナがCISから出ていく場合は、増やしてもらった分を置いていく義務があることになる。下斗米著では189頁から解説されるが、プーチン本人の悪名高い「一体性」論文から、激越な調子を引いてみよう。
自分の国家を創設したいのですか? どうぞやってください。しかし、どのような条件で創設するのかという問いは残る。
ここで、新生ロシアの最も著名な政治家の一人であるサンクトペテルブルク初代市長A.ソプチャクの評価〔1992年〕を思い出してみよう。法律家として高い専門性を有した彼は、……「連邦創立メンバーの共和国は、1922年の〔ソ連邦結成の〕条約を自ら破棄した後は連邦加盟時の国境に立ち戻るべきであり、それ以外の領土については、その根拠は破棄された為に、すべて議論と交渉の対象であるべきだ」と述べた。
つまり、「持っていたものだけを持って立ち去れ」ということだ。この論理には反論しがたい。
2021年7月(段落を改変) ソプチャクとは大学でのプーチンの師で、 彼を副市長に抜擢した人物
さて、プーチンが善良な指導者かは措いて、私たちの前にあるのは、以下のような問いである。
今回のウクライナ戦争をCISの「内戦にすぎない」と見なすなら、それはプーチンの論理に丸ごと乗っかることだが、あくまでも問題を旧ソ連圏に特殊なものとして処理できる。ウクライナがいくら領土を割譲されても、それは同国に固有の問題で、他の「主権国家一般」には波及しない。
一方で、ウクライナはソ連邦の解体以降、まっとうな主権国家だったのであり、プーチンの侵略は国際法に違反すると考えるのが、従来の私たち西側の立場である。が、これだと主権国家だろうがなんだろうが「敗けたら領土を獲られる」のが、この戦争を終えた後の、世界のルールとなろう。

また増えてきてますね、「新ヤルタ体制」論。2017年のNYTより